長野県長野市内の寺院が宗派を超えて結集し、さまざまな活動を。善光寺で開催される「花まつり」など。

第10話「勇気と精進」

Nagano-shi Buddhist Organization

第10話「勇気と精進」

長野市仏教会仏様のおしえ

日米のプロ野球で通算4257安打を放ち、3563試合に出場したイチロー選手が現役を引退したのは、平成が最後となる年の春でした。安打数はギネス世界記録と認定され、出場試合数も最多とされています。
まさに「精進」のかたまりのようなイチロー選手、その引退記者会見は、一つの道を究めた言葉にあふれていました。

イチロー選手がメジャーリーグへの挑戦する時、大変な勇気が必要だったそうです。でもその時、成功すると思うから挑戦したわけではないといいます。

やりたいと思えば挑戦すればいい。そうすれば、どんな結果が出ようとも後悔はない。

イチロー選手の言葉です。勇気をふりしぼって果敢に挑戦する。人生にはそうした決断を下す時があります。

その決断を大切にして努力し続ければ後悔することはない。私たちの背中を押してくれるような言葉です。このような言葉もありました。

少しずつの積み重ねでしか自分を超えていくことはできない。一気に高みに行こうとすると、今の自分とギャップがありすぎて、
それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。

高い理想を前にして尻込みしてしまうのが私たちです。

だからこそ、はじめの一歩を踏む出す勇気が大切と言えましょう。でもはじめの一歩だけで理想にたどり着くわけでありません。
ひるまず挫けずに諦めずに地道な努力を続けていくことこそが大切と、イチロー選手はそう言いたいのだと思います。それこそが仏典に綴られる「精進」の意図するところであろうと思います。

この精進、インドの古い言葉で「ヴィールヤ」といいます。このヴィールヤ、じつは他にもいくつかの訳語が知られています。

その一つが「勇気」です。はじめの一歩を踏み出す「勇気」、できないと思うことでも挑戦する勇気。
地道な努力を積み重ねていく「精進」とともに、インドではどちらもヴィールヤと呼ばれています。

ところでお釈迦さまの教えのなかに、こんな言葉があります。

美しく色鮮やかであっても薫らない花があるように、巧みに説かれた教えであっても、それを実践しない人にとっては無益である。

美しく色鮮やかであるうえに、よく薫る花があるように、巧みに説かれた教えは、それを実践する人にとっては有益である。(『ダンマパダ』第五一・五二偈試訳)

どれほど尊い教えでも知っているだけでは「絵に描いた餅」「宝の持ち腐れ」となってしまいます。仏教においては、例えば、いつでも笑顔を絶やさず、優しい言葉遣いに徹し、分け隔てなく思いやりの心を持つといったことも大切な教えとなります。

「できる」「できない」などという前に、まずは挑戦してみる、諦めずに挑戦し続けてみる。勇気を出して精進してみる。そうした日々の先には、香しく薫る花がたくさん咲いていることでしょう。

令和元年 長野市西後町十念寺 袖山榮輝